題名:不謹慎なお葬式の話    作者:上野 小夜  ---------------------------------------------  著作権について  ・本ページで公開されている作品の著作権をはじめとするすべての権利は   全て作者が保有いたします。  ・このページからダウンロードできる脚本は全て無料で読んでいただいて   結構です。ただし、舞台等で御利用の際は、作者からの上演許可を取っ   ていただくようお願いいたします。  ・必要に応じての改編等も、作者への許可の上行って下さい。  ・著作権料が発生する場合、指定された額を作者へ送金を忘ないように   お願いいたします。本作品おける著作権料は、下記に示す通りです。  ---------------------------------------------   小学校、中学校、高校、その他学生の無料公演・・無料   アマチュア劇団の公演、学生の有料公演・・・・・5000円   プロの劇団の公演・・・・・・・・・・・・・・・全チケット収入の1割     (全チケット収入の一割が5000円に満たない場合は5000円)     [2]の場合、公演の2週間前までに、     [3]の場合、公演後2週間以内にお支払いください。  ※本作品は作者の許可無く準上演を行うことが出来ます。  ※準上演についての詳細は、http://haritora.net/copyright.html をご参照ください。  【追記事項】 近ければ見に行きたいので上演の際は必ずご一報ください。  --------------------------------------------- 不謹慎なお葬式の話 聡子……20代後半の女。真面目なOL。真面目すぎる自分がちょっと嫌。徹のことを面白いと思っていた。徹の愛人1。 怜夏……20代後半の女。金遣いが粗い。お金が大好き。徹の愛人2。 絵美……女子高生。大人に媚びるのがうまい。徹の愛人3。 高瀬徹……30代男性。ついてない男。ニート暮らしをしていたが、急に宝くじが当たり、5億円受け取って1週間後に死亡。 高瀬裕也……30代男性。徹の弟。真面目なエリートサラリーマン。怜夏と付き合っている。 高瀬春樹……徹、裕也の兄。徹を溺愛していてめちゃめちゃ凹んでいる。 第一場 遠くから聞こえる読経の声。ベンチに座っている制服姿の絵美。適当に携帯をいじっている。隅の方に立っている喪服姿の聡子。そこに同じく喪服姿の怜夏がやってくる。 怜夏 (聡子を見て嫌そうな顔で)あ。 聡子 (こちらも怜夏を見て嫌そうな顔で)あぁ、あら、どうも。お焼香は済んだんですか? 怜夏 えぇ、ずいぶん少人数の式でしたから。 聡子 そうでしたね。 怜夏 ま、当然か。 聡子 そういう言い方は、ちょっと…… 怜夏 (気にせず)だってそうじゃない。あれ、ねぇ、まさかあの子も? 聡子 さぁ、妹さんか何かですかね。 怜夏 まぁ、だったら遺産に関係あるか。でも妹なんていたっけ? 聡子 弟さんはいたと思いますが……  読経の声がフェードアウトし、遺影を持った裕也がやってくる。 裕也 どうも、ご多忙のところご参列ありがとうございました。 聡子 いえ、このたびはご愁傷様です。 怜夏 本当に。 絵美 徹君、かわいそう。 裕也 お気遣いありがとうございます。それでですね、あの、確認させていただきたいのですが、お三方とも兄と付き合っていたということでよろしいでしょうか? 三人 はい。 怜夏 (絵美に)えっ?あんたも? 聡子 犯罪…… 裕也 遺言書には絵美さんの名前もありましたのでたぶん間違いはないかと。 絵美 そーだよ。徹ちゃんとご飯とか行ったし。徹ちゃんもおばさんより若い子の方がいいに決まってるじゃん。 聡子 おばさん…… 裕也 あの、まだお話し終わってないので聞いていただけますか? 怜夏 あぁ。はい。 裕也 で、一応遺言書もあるので疑うわけではないのですが、私もお会いしたことがないので、念のため皆さんと兄との出会いだけ教えていただけませんか? 聡子 はい。あの、10日ほど前、仕事で失敗して凹んでいたら急に声をかけられてマジックを見せてくれたんです。ほら、耳が大きくなるマジック。ベタだけど笑っちゃって。それでその日にご飯だけ行きました。 怜夏 5日前、道を歩いていたら1000万円のランチを食べない?と声をかけられて一緒にご飯に行きました。 絵美 3日前に家の前でマンションいらない?って言われたから付いて行ったんです。ほんとに買ってくれてびっくりしちゃいました。 怜夏 高っ! 聡子 というより何か、私だけ安くない? 裕也 えーと、皆さんありがとうございます。まぁそのー、皆様兄とは非常に短い付き合いかと思うのですが、遺言で皆様のうち誰かに遺産を3億円ほど残したいということになっておりまして皆様のうちこれから行うゲームで勝利された方に遺産をすべて差し上げるということなんですが、参加されますか? 絵美 もちろん。楽しそうだし。 聡子 ゲームって。 裕也 それは参加される方には説明いたします。 怜夏 念のため、危ないことはないのよね? 裕也 そういうことは全くありません。負けても遺産がもらえないだけです。 怜夏 じゃあ、私もやるわ。 聡子 そうね。私も。 裕也 ありがとうございます。それでは、さっそくですが、始めさせていただきます。 第二場 裕也 それでは、第一部はクイズです。どうぞみなさん、これをお持ちください。  裕也、よくわからないボタンを三人に渡す。 怜夏 なにこれ? 裕也 第一部は早押しクイズです。これを押して解答権を得た方から答えてください。 聡子 このボタン動くの? 裕也 もちろんです。押してみてください。 聡子 (押すと猫の鳴き声とか気の抜ける効果音が出る。)何かやる気なくすわね。 裕也 まぁ、あまりお気になさらず。それでは、クイズの方はそちらのスピーカーから流れますので私は失礼します。 絵美 えっ、ここでやるの?ちょっと恥ずかしいんだけど。 裕也 細かいことは気にしないでください。それでは。  スピーカーから徹の声が流れ出す。 徹 このたびは、俺の遺産争奪戦に参加してくれてありがとう!さっそくだけど、クイズだよ。まぁ、これが流れてるってことは俺死んでるんだけどね。うん、細かいこと気 にしなーい。 怜夏 うざっ。 聡子 故人にそういうことは…… 徹 何か文句言われてそうだけど第一問!俺の好物はなんでしょう! 絵美 えー何それー。 怜夏 知るわけないでしょ。 聡子 これって、徹さんに関するテストが続くの? 怜夏 そうだったら全然無理ね。 絵美 (ボタンを押す) 怜夏・聡子 わかるの!? 絵美 フォアグラ! 徹 (すごくバカにした感じで。以下同。バリエーションがあるといい)不正解! 怜夏 何でフォアグラなのよ? 絵美 絵美が好きだから徹ちゃんも好きかなって。 聡子 好物フォアグラなの? 怜夏 かわいくないガキね。じゃあ、はい(ボタンを押す)エビのチリソース。 徹  不正解! 聡子 好きなの? 怜夏 一緒にランチに行ったときに食べてたのよ。 聡子 なるほど。あ、じゃあ、(ボタンを押す)麻婆豆腐! 徹 (意外そうに)正解! 聡子 確かに、麻婆豆腐食べてたわ。 怜夏 余計なこと言ったわ。 絵美 えー、ずるいー。 徹 では、第二問!俺の幼稚園のときの夢はなんでしょう! 怜夏 えー、どうせバカそうなのでしょ?(ボタンを押す)正義のヒーロー。 徹 ぶっぶー。 絵美 じゃあ、(ボタンを押す)ケーキ屋さん。 徹 ぶっぶー。 怜夏 あんた、全部自分の事答えてるだけでしょ。 聡子 そうね、(ボタンを押す)太陽。 怜夏・絵美 はっ? 徹 (ちょっと間があってから)ぶっぶー。 裕也 (声のみ)惜しいですね。正解は月です。もともとは太陽になりたいって言ってたんですけど、私も太陽になりたいって言ったら兄が太陽を譲ってくれたんですよ。 怜夏 何、このバカ兄弟。 絵美 (聡子に向かって)おばちゃん、やるねー。 聡子 お姉さん、ね。何となく太陽とかそういうこと言いそうに見えたから。 徹 では、第三問!俺が最近当てた宝くじの賞金は? 怜夏 (宝くじくらいまで聞いたらボタンを押す)前後賞合わせて7億円! 徹 (つまんなそうに)正解 絵美 ちぇっ。やっぱおばちゃんたちの気迫に勝てないなぁ。 怜夏 お姉さんでしょ?  いつの間にか裕也が出てきている。 裕也 それでは、早押しクイズはここまでです。やっぱり、皆さん1週間の付き合いですし、お金の事しか知りませんよねー。それでも、聡子さんと怜夏さんが1ポイントずつ取ってますから接線ですね。第二部も頑張ってください。10分くらい休憩します。 第三場 絵美 疲れたー。ちょっとコンビニ行ってきてもいい? 裕也 どうぞ。皆さんがそろわないと始めませんのでご安心ください。 聡子 私もちょっとその辺ふらふらしてくるわ。 裕也 ごゆっくり。怜夏さんはよろしいんですか? 怜夏 私はいいわ。  絵美、聡子去る。若干気まずい沈黙が落ちる。裕也はちらちらと怜夏を見るが、怜夏は気にしないふりをする。 裕也 ……怜夏さんが兄と付き合っていたとは知りませんでした。 怜夏 だからお昼食べに行っただけよ。 裕也 まぁうちの兄ですからそうでしょうが。それにしてもねぇ。 怜夏 だって気になるじゃない1000万円のランチ。 裕也 そもそも1000万円のランチってなんだったんですか? 怜夏 中華のフルコースなんだけど杏仁豆腐の中身が豆腐以外全部宝石だった…… 裕也 それ美味しいんですか? 怜夏 全然。 裕也 うちの兄っぽいですね。  レッドブルを飲みながら絵美が帰って来る。 絵美 あぁー生き返った。これで第二部は負けない気がする。 怜夏 徹夜明けのおばさんみたいね。 絵美 ホンモノのおばさんに言われたくないよー。 裕也 まぁまぁいちいち喧嘩しないでくださいよ。  そこに聡子と春樹が戻ってくる。 春樹 徹は本当にいい子だったんですよ。バカだけどかわいくてねぇ。次はどんなバカなことをやってくれるか楽しみにしてたんです。 聡子 いい方ほど早く亡くなるっていいますからね。残念です。 春樹 あなた、徹の良さがわかるなんていい方ですね。 聡子 徹さんは周りを明るくするような不思議なパワーをお持ちでしたよね。 春樹 (ものすごく力説する感じで)そうなんです!小さいころから徹が派手にこけては大爆笑し、川に流されては大爆笑し、あの子はいつでも周りに笑いをくれました。 裕也 春樹兄さん、落ち着いて。 春樹 これが落ち着いていられるか!?むしろ何でお前はそんなに落ち着いているんだ。 裕也 ほら、これは徹兄さんの指示だからさ。ちゃんと最後までやらないと。 春樹 そうか、それもそうだな。じゃあ、聡子さん、あなたはいい方ですし、頑張ってください。  春樹、はける。 聡子 ありがとうございます。(三人に)あ、お待たせしました。すみません。 裕也 いえいえ、10分程度と言ってましたし大丈夫ですよ。むしろうちの兄がご迷惑をおかけしていたようですみません。 絵美 お兄さんもたぶらかすとはやるなー。(怜夏に)ね? 怜夏 そうね。 聡子 そういうわけじゃ…… 裕也 (咳払いをして)じゃあ、そろそろ第二部を始めますか。 第四場 クイズが始まりそうな音楽がかかる。 裕也 それでじゃ、第二部は皆さんに関するクイズです。ということで今から出す質問に正直に答えてください。正直に答えないと言われたくないことを言っちゃいます。 三人 どういうこと? 裕也 では、例題です。私はうそつきである。はい、みなさん〇か×で答えてください。自分がうそつきだと思う方は〇、そうじゃないと思う方は×ですよ。(言いながら〇×の札を三人に配る) 怜夏 (自信を持って)〇。 聡子 それは自信を持って答えることなの?私は×ね。 絵美 えー、絵美も×。 裕也 えーと、絵美さんは兄と出合った時に年齢詐称をしてますよね。 絵美 げっ? 裕也 女子中学生と聞いていたのに女子高生だったと兄のメモが残ってます。 聡・怜 その年で下にサバ読んだの!? 裕也 ルールはご理解いただけましたでしょうか。正直に答えれば点数が稼げる非常に簡単なクイズです。それではみなさまがんばってください。  裕也、はける。 徹 では、第一問。俺と食べたご飯は美味しかった。 聡子 〇 絵美 〇。普通に美味しかったよ。 怜夏 × 徹 ……三人とも正解!やっぱり宝石は美味しくなかったよねー。 聡子 宝石食べたの!? 怜夏 杏仁豆腐に入ってたのよ。さすがに食べてないわよ。宝石はありがたくいただいたわ。 絵美 いいなぁその杏仁豆腐おしゃれ。 聡子 そう? 徹 では、続いて第2問、実は、俺の兄弟と付き合っている。 聡子 (当然のように)× 怜夏 …… 絵美 …… 聡子 え、迷うところ? 怜・絵 〇。 徹 正解! 聡子 本当に!? 怜夏 は?どういうこと!?あんたも裕也と付き合ってんの?ちょっとまじ勘弁なんだけど。裕也!? 絵美 あ、何だそっちか。大丈夫大丈夫。おばさんとかぶってないから。絵美あぁいう嫌味な感じのやつ好みじゃないし。 怜夏 違うの?って人の彼氏さりげにけなすんじゃないわよ。 絵美 絵美が付き合ってるのさっきの上のお兄さんだから大丈夫。 聡子 ……ちなみにいくつ差? 絵美 えーとね、春樹ちゃん35だから18歳差かな。それくらいよくあるでしょ。 怜夏 ない。 聡子 少なくとも片方が女子高生の場合は犯罪でしょうね。 徹 えーと、そろそろ話は落ち着いたかな。 怜夏 さっきから思ってたけどまるで見えてるみたいな間合いね。 聡子 それは私も気になってるのよね。 徹 では、第3問 実はお金に困っている。 怜夏 嫌な質問ね。 聡子 たしかに陽気に聞く質問ではないわね。 絵美 大人は大変だねー。絵美はもちろん×。 聡・怜 ……〇。 徹 (無駄に陽気に)せいかーい。  聡子、怜夏、顔を見合わせるが特に何も言わない。 怜夏 次は? 徹 続けちゃって大丈夫かな?じゃあ、第4問 今、幸せである。  三人とも顔を見合わせる。 怜夏 ずいぶん抽象的な質問ね。 聡子 そんなの本人の感じ方次第だしね。 絵美 たしかにー質問としては微妙だよね。 三人 ……×。 徹 (陽気に)正解。三人とも幸せとはいえないよねー。あれ、テンション下がってる?じゃあ続けて行っちゃうよ。ラスト、第5問! 俺のことがちょっとでも好きだった。 怜夏 ……残念だけど×。 絵美 ……もちろん×。 聡子 ……〇。 徹 みなさん素直ですね。私は、エスパーじゃないのであなた方の心はわかりませーん。あなた方の答えが正解です。 怜夏 何それ!?〇って答えた方がよかったわけ? 絵美 また、おばさんに負けてる気がするー。 徹 みんな、あんまり怒らないでね。じゃあ、ここでまたきゅうけーい。10分くらい休んでね。 第五場 何となく沈黙の三人。ビミョーな空気。 怜夏 お金、困ってるの? 聡子 そっちこそ。 絵美 二人とも大変だねー。エンコーとかしたら?年齢的に無理か。 怜夏 うるさいわね。小娘のするエンコーくらいじゃ足りないわよ。 絵美 絵美、エンコーはしてないもん。 怜夏 私もしたことないわよ。 聡子 1000万円のランチは?宝石売ったの? 怜夏 多少ね。全部はもったいなくて。そもそも私宝石好きだし、自分でもすぐ買っちゃうのよね。 絵美 そんなの彼氏にねだればいいじゃん。 怜夏 違うの。仕事とかでいらいらすると手当たり次第買いたくなって。人に買ってもらうんじゃ意味ないし別に大してほしいわけでもないのよ。 聡子 買い物依存症? 怜夏 まぁ、あえて病名をつけるならそうなんじゃない? でも別に金遣いが粗いだけよ。そっちは?私だけしゃべるのはずるくない? 聡子 あなたが勝手にしゃべったんじゃない。 怜夏 まぁ、そうね。 聡子 ……絶対ばかにしないでよ。 怜夏 何よ? 絵美 えー、それはちょっと約束できなーい。 聡子 (絵美に)あなたには最初から期待してないわ。 絵美 それもちょっとひどくない? 聡子 うるさいわね。同棲してる彼氏が無職だから生活費かかっちゃって。私もそんなに稼ぎよくないし。 怜夏 いわゆるヒモ? 聡子 まぁ、簡単に言えばそうね。 絵美 えー、意味わかんなーい。そんなの追い出せばいいじゃん。 怜夏 お子様。 絵美 歳と関係ないじゃん。ヒモ養ってるのって大人なの? 怜夏 そういうわけじゃないけど、まぁ長い付き合いなんでしょ。 聡子 そうねー。もう6年。 怜夏 ちなみになんか目指してる人なの? 聡子 一応イラストレーター。でも、厳しいって本人もわかってるんじゃないかな。年々私に対して卑屈になるし。 怜夏 DVじゃなくて良かったわね。 聡子 でも、人生うまくいかないって殴るような人ならもっと早く別れられたんだけどね。 怜夏 そういう見方もあるわね。 聡子 別にお金に余裕があれば養ってもいいんだけどさ。 絵美 じゃあ、今回遺産がもらえれば的な? 聡子 でも、それもやっぱり違う気がするんだよね。 絵美 何で? 聡子 うーん、うまく言えないけどそのお金で二人で無職で暮らしているのも私が仕事続けてあの人が一切働かないのも違う気がするんだよね。 怜夏 それは、そうかもね。何か、自分に自信が持てないかも。 聡子 うん。イラストレーターじゃなくても稼ぎが良くなくても何か自分で見つけなきゃだめな気がするんだよ。それがあるならね、プラスアルファのお金はうれしいんだけど。 絵美 よくわかんない。でさ、結局二人ともお金に困っててお金ほしいの? 聡子 たしかに、よくわかんないね。 怜夏 私も。わかんないな。買い物するだけかも。 絵美 えー、いらないならおばちゃんたち降りればいいじゃん。 怜夏 うるさいわね。そういうあんたは?お金あっても幸せじゃないくせに。 絵美 絵美には絵美の苦労があるんですー。 怜夏 どうせ、エンコーで知り合ったおじさんに学校にチクられるとかその程度でしょ。自業自得ね。 絵美 だからエンコーしてないし!勝手に変な設定つけるのやめてほしーんだけど。 聡子 でも、別にお金はあるんでしょ?マンションももらってるなら十分な気もするんだけど。 絵美 別に。ちょっと面白そうだから参加しただけでそりゃそんなに賞金がほしいわけじゃないけどさ。ま、暇つぶしだよ。暇つぶし。 怜夏 意外とプライベートはしゃべらないのね。ま、小娘のプライベートなんてタカがしれてるからいいけど。  そこに裕也がやってくる。 第六場 裕也 皆様休憩はお済みでしょうか? 随分、打ち解けられました? 聡子 そうね。 怜夏 あの悪趣味なクイズのせいでね。 裕也 (にっこり笑って)簡単なクイズだったでしょう? 絵美 でも、あんまり差がつかないから意味がないよー。 裕也 そうですね。今のところ、結局聡子さんがトップですね。では、第三部に行きましょうか。 聡子 ……あの!これってゲーム降りてもいいんですよね? 怜・絵 えっ? 裕也 あぁ、はい。相続に興味がなければ結構ですよ。 絵美 その場合、どうなるの? 裕也 もちろん、残りの二人で勝負となります。三人とも降りた場合は、僕とか兄さんとか普通に親族に行きますね。 怜夏 ふーん、なんだ。じゃあ、私それでいいや。降りる。何かすっごくいい物おごってね。 裕也 いいんですか? 残りのお二人が辞退されなければ遺産は聡子さんか絵美さんに行くことになりますよ。 怜夏 だって、あの二人もお金いらなそうだし。私も、あると使っちゃうしね。 裕也 そうですね。怜夏さんはクレジットカードもお持ちにならない方がいいと思います。 怜夏 一言多いわよ。じゃ、そういうことで。 絵美 えー、じゃあ私も降りる。そんなにお金いらないし。春樹君におごってもらえばいいや。 裕也 本当によろしいんですね? 絵美 うん。別にいいよ。 裕也 では、この時点で優勝は聡子さんに確定になります。 聡子 えっ…… 怜夏 もらってもヒモに貢ぐだけでしょ。 絵美 えーでも、自分の服とか買えばいいじゃん。 怜夏 だったら私だってちょっとほしいわよ。 裕也 お二人はちょっと静かにしてください。それで、聡子さん、どうされますか? 聡子 ……あの、私もやっぱりいいです。後日でいいので、代わりに何か徹さんの遺品いただけませんか?マジック道具とか。 裕也 それはいいですが、本当によろしいんですか? 聡子 はい。 怜夏 やっぱりね。 絵美 お金は大事なのになー。 怜夏 不幸なくせに。 絵美 違うもん。 裕也 最後にもう一度だけ確認します。みなさん、本当にいいんですか? 絵美 うん。 怜夏 えぇ。 聡子 はい。 裕也 じゃあ、ゲームはリタイアということで。(ルールブックを読みだす)すみません、リタイアの記述をよく読んでいなかったもので。えーと、自主的なリタイアの場合は、「一人につき報奨金5万円を与える。遺産については、法定相続分にのっとる。」なるほど。じゃあ、5万円ずつ渡しますね。(ご祝儀袋を出してくる) 聡子 リタイアしてももらえるんだ。 怜夏 まぁ5万円だけどね。 絵美 いいじゃん、おばちゃんたちお金ないんでしょ。 怜夏 そうね。(聡子に)たまには自分の物でも買いなさいよ。 聡子 確かに。どっかおすすめの店教えてくれない? 詳しいでしょ? 怜夏 嫌味? いいわよ、リーズナブルなお店に連れていってあげるわよ。あんたも行く? 絵美 えー、私は春樹ちゃんに連れてってもらうからいいや。 怜夏 ほんとかわいくない。(裕也に)じゃあ、またね。 聡子 お世話になりました。 裕也 こちらこそお世話になりました。また、遺品の件もあるので後日ご連絡させていただきますね。 聡子 ありがとうございます。 絵美 じゃあ、かえろっか。 怜夏 そうね。 聡子 ショッピングどこに行きますか?  三人、和やかに去っていく。一人残る裕也。徹が出てくる。 徹 やっぱり、お前の勝ちかー。 裕也 当然です。 徹 俺は怜夏ちゃんが5億ゲットしてお前がふられるのにかけてたんだけどなぁ。 裕也 兄さんの負けなんですからちゃんと負け分払ってくださいよ。あ、あと兄さん、ほんとに兄さんが死んだと思ってるのでそろそろ誤解といてきてください 徹 そうする。葬式でも大号泣だったしな。あんなに愛されてるとは思わなかった。案外、俺大事にされてるのかもな 裕也 そうですね。  そのとき、遠くから春樹と絵美の声が聞こえてくる。 春樹 どうなった!? 絵美 ちゃんと皆辞退になったよ。これで法定なんたらになるんでしょ。 春樹 よくやった!法定相続分なら俺にも遺産の3分の1がくる!絵美は偉いなー。 絵美 えへへ。絵美、頑張ったもん。 裕也 えーと、愛してたのはお金、ですかね。まさか、絵美ちゃんが春樹兄さんの刺客とは。 徹 (泣きながら)聡子ちゃーん。  徹、聡子を追ってはける。 裕也 あ、徹兄さん、凹まないでください。僕は兄さん好きですよー。  裕也、徹を追ってはける。幕。  ---------------------------------------------   以上、いかがでしたでしょうか?   よろしければ下記のページより、感想を御記入下さい。   もちろん、叱咤激励なんでもかまいません。   作者の方の励みにもなりますので・・・    http://haritora.net/bbs/?type=10106   また、下記ページから作品の評価登録も可能です。(要登録)    http://haritora.net/critic/member/look.cgi?script=10106  それでは、今後とも『はりこのトラの穴』をよろしくお願いいたします。