題名:成仏は一日にしてならず2015    劇団:劇団ぼるぼっくす    作者:上野 小夜  ---------------------------------------------  著作権について  ・本ページで公開されている作品の著作権をはじめとするすべての権利は   全て作者が保有いたします。  ・このページからダウンロードできる脚本は全て無料で読んでいただいて   結構です。ただし、舞台等で御利用の際は、作者からの上演許可を取っ   ていただくようお願いいたします。  ・必要に応じての改編等も、作者への許可の上行って下さい。  ・著作権料が発生する場合、指定された額を作者へ送金を忘ないように   お願いいたします。本作品おける著作権料は、下記に示す通りです。  ---------------------------------------------   小学校、中学校、高校、その他学生の無料公演・・無料   アマチュア劇団の公演、学生の有料公演・・・・・5000円   プロの劇団の公演・・・・・・・・・・・・・・・全チケット収入の1割     (全チケット収入の一割が5000円に満たない場合は5000円)     [2]の場合、公演の2週間前までに、     [3]の場合、公演後2週間以内にお支払いください。  ※本作品は作者の許可無く準上演を行うことが出来ます。  ※準上演についての詳細は、http://haritora.net/copyright.html をご参照ください。  --------------------------------------------- 成仏は一日にしてならず 知子……18歳で死んだ文芸部の女の子の幽霊。生きていたときの記憶がなくいつも不安。    元々自分に自信がないタイプ。地縛霊で学校の半径50メートルくらいしか動けな    い。 真理……28歳。契約社員をしながら小説を書く。小説は地道に続けているが売り上げはい    まいちでそれだけでは生活できない。 花子……学校に住み着く幽霊。昔っからいる。学校に住んでいるだけで別に他のところに    も行ける。サバサバしてそうだけど意外とさびしがり屋。 田中……学校の近くの公園に住んでいるホームレス。よく遊びに来る。意外と襟つきポロ    シャツとかくらいのかっちり目の格好で新聞とか読んでる。 御堂嘉代子……勝手に除霊してまわる迷惑な霊媒師。静かにしゃべりかっこつけているが      大した力はない。不意をつくか心の弱い幽霊くらいなら成仏させられる。 坂谷君……元放送部の幽霊。地縛霊かつ姿は見えない。常に校内放送でしゃべる。声だ      け。 音楽室のベートーベン……地縛霊。目が動くところか絵画に手足が映えて動く。髪型だけ            ベートーベン風にして顔の周りに額縁をつける。 山下……臆病な学校の隣人。20代女性。学校の幽霊の噂を聞いて勝手に霊媒師を頼んで    しまった。 第1場 廃校の中 音楽大きくなる。舞台暗くなる。知子と花子が入ってきて双六を始める。Mゼロ下がる。SEで雨、雷が入ったら知子双六ゴール。 花子 あー、また先に成仏されたー。知子強いなぁ。 知子 花子さんが弱すぎるんですよ。 花子 そうかなー。 知子 っていうか二人で双六してもあんまり楽しくないですよ。 花子 だって最近おじさんも来ないし、つまんないんだもん。 知子 しょうがないでしょ。生きてる人はそんなに幽霊にかまってばっかりいられないですよ。 花子 そりゃそうだけどさー。 知子 (雷のSE)それにしても天気ひどいですねー。 花子 あ、これならおじさん避難してくるかも。 知子 たしかにこの雨の中公園暮らしは厳しいですね。 花子 だよねー。(雷のSE)いいねぇ、不穏な雰囲気。何か出そうじゃない? 知子 はいはい、幽霊が何いってるんですか? 花子 いやいや、何か新手のやつが出てくるかもしれないじゃん?動く埴輪とかさ。 知子 うちの埴輪は動きません。動くのは理事長室の甲冑くらいです。 花子 甲冑先輩お固いからつまんないんだもん。はぁ、もう何か面白いことないかなー。 坂谷 (校内放送の音、口でいう)(ノリノリで)ピーンポーンパーンポーン、ピーンポーン、あ、口で言っちゃった。さて、大変、大変長らくお待たせしました。 花子 待ってないから 知子 待ってません。 坂谷 お待たせしました。みんながお待ちかね、DJサカタニのミュージックターイム(ジングル入る)。 知子 もう、花子さんが何かでないかなとかいうから余計なの出てきちゃったじゃないですか。 花子 私のせいー? 知子 そうですよー。 坂谷 ちょっと、ちょっと、無視しないで。さて、まずはリクエスト曲のコーナー!。 知子 あんまり音楽の気分じゃないですよね、雷なってますし。 坂谷 えー、だって二人でしゃべってばっかりで俺だけ除け者ってひどくない? 花子 だってあんた双六できないじゃん? 坂谷 できるできる! 知子 でも、サイコロふれないですよね? 坂谷 花子さんがふってくれればいいじゃん。 花子 めんどくさい。 坂谷 ばっさりいうなよー。俺だってかまってほしいんだよー。 花子 だって、双六でサイコロふれなかったら何もしてないのと一緒じゃん。 坂谷 俺だって、そのすごろく一緒に作ったじゃん。 花子 あんた、変なます目ばっかり増やすから。すぐ地獄マップとか行っちゃうじゃん、これ。 坂谷 天国もあるじゃんか。知子、お前は俺の味方だよな。 花子 ちょっと、知子ー。 知子 あー、もううるさい!ほんと、もういい加減成仏したい!  オープニング曲入る。音楽にあわせて無声で演技。うるさがる知子。話しかける花子。やってくるおじさん。通りかかる真理と山下。ダンス。田中、山下はける。真理と知子の目が合うところでその絵を撮りつつ暗くなる。花子はその二人を眺めている。 第2場 廃校の前(舞台手前)  明転。舞台奥では相変わらず知子と花子がだらだらしている。二場の途中から二人はあっちむいてほい、などをしている。SE雨、雷。真理、傘を差して上手から出てくる。携帯電話のSE。 真理 はい、坂井です。いつもお世話になっております。はい。あー、ラストですか。そうですか、もう少し希望の残る終わり方、はい。あれだと、暗すぎますか?すみません。はい。すぐ直します。   田中、上手から下手へ。 田中 (新聞紙で頭を覆いながら)あー、大分濡れちゃいましたね。これだから夏は嫌なんですよね。 真理 はい。あ、ホラーで短編ですか?はい、来週末までに?えーと、今、ストックはないですけど……ちょっと考えてみます。2、3日待っていただけませんか?はい、よろしくお願いします。はい。失礼します(電話を切る)。はぁーあ、誰が穴開けたのかなぁ。ホラーかぁ。墓地、病院、廃校……。廃校?(学校の方を見る。考えている)。  山下、下手から上手へ 山下 あのー。 真理 はい。 山下 あのですね。 真理 (引きつつ)なんですか? 山下 そこ、出るので気を付けてくださいね。 真理 はい? 山下 いや、そこ、出るらしいんです。 真理 何がですか? 山下 だから、あれですよあれ。 真理 (やばい人だ、みたいな感じで)あー、そうなんですか。 山下 はい。だから入らない方がいいと思います。 真理 あ、はい。わかりました。ありがとうございますー。  山下はける。 真理 うわー。人の母校に失礼だし。廃校、廃校ねぇ。 真理、下手へ。SE雷。手前暗くなる。 第3場 学校の中(舞台奥) 舞台奥明るくなる。 花子 もう。あっちむいてほいつまんないよー。ぜんっぜん勝てないし。人生ゲームしようよ。 知子 だから二人じゃつまらないんですって。  田中、下手から部屋へ。 田中 こんばんは。外はひどい雨だよー。 花子 あ、おじさん!やっぱり来た。 知子 こんばんは。何か台風みたいですね。 田中 いや、もう風も雨も強くって。せっかく拾った新聞がぼろぼろになっちゃったよ。 花子 おじさん、新聞なんて読んだってしょうがないじゃん。日経に日雇いの求人は出てないよ。 田中 悲しいこといわないでよ。最近の株価の動向が気になるんだよ。 花子 株持ってないのに? 知子 花子さん、あんまり田中さんをいじめちゃだめですよ。 田中 ほんとだよ。全く日本社会だけじゃなく幽霊にまでいじめられるなんて。僕だって昔は証券マンとして日本の経済成長にあんなに貢献してきたのに。 知子 でもさっきから花子さん、ずっと田中さん待ってたんですよ。 田中 本当? 知子 はい、二人で双六やってもつまらなくて。 田中 まぁ、それはそうだろうね。あの子は?放送室の幽霊。 花子 (遮って)呼んじゃダメ!また、出てきちゃうから! 田中 そうなの? 知子 はい。さっき俺も一緒にゲームしたいーってうるさいのをやっと追い払ったところなので。 花子 あいつ、実体ないからできるゲーム少ないんだよー。 田中 なんか、それは、かわいそうだね。 花子 じゃあ、おじさん放送室で一緒に遊んで来たら?サカタニオンステージに三日くらい付き合ってあげたら満足して成仏するかもよ。 田中 あ、やっぱり遠慮しときます。 花子 でしょ?いい子ぶらないでよねー。  そこに、部屋の外から様子を窺うようにしていた真理が知子を見てびっくりしている。 花子 (知子に)あれ、誰?新手の幽霊? 田中 あ、たしかさっき外で電話してた。人間だと思うけど。 花子 (真理を引っ張って来ながら)こんばんは。あなたは人間?私、幽霊の東京花子っていいます。好きな食べ物は牛なべ。死因と享年は秘密でよろしく。 真理 えっ? 田中 花子さん、牛鍋って古いですよ。すき焼きでしょ?あ、僕は社会的に死亡しているホームレスの田中です。 花子 つまんないってかつっこみにくい! 知子 花子さん、つっこんでるじゃないですか。あ、騒がしくてすみません。私も幽霊で島田知子といいます。 真理 知子? 知子 え? 真理 知子なの? 知子 はい、知子ですけど。あなたは? 真理 えっ、だって知子は死んだんだよね。なんで?だって、そのまま、そのまま。ずっとここにいたの?ねぇ、私たちが卒業してからもずっと。 知子 え、あの。 真理 (知子に詰め寄る)ごめん!恨んでるよね。勝手に小説使って。だから成仏できないの?ごめんね。 知子 あの、すみません。わからないんです。私、何も覚えてなくて、ごめんなさい(言いながら部屋を出ていく)。 真理 え、ちょっと。 田中 あ、ちょっと、知子さん、知子さん。  田中、知子の後を追って部屋を出ていく。真理は呆然とその様子を見つめる。 花子 ……知子と友達だったの? 真理 ……はい。高校の同級生です。 花子 そうなんだ。 真理 ……あの、幽霊って。 花子 言葉通り正真正銘の幽霊。 真理 え、でも 花子 何でいるのとか無粋なこと聞かないでよ?いるんだし、見えるんだからしょうがないじゃん? 真理 ……はい。 花子 私はね、結構前からこの辺りにいて、知子は10年くらい前からかなぁ。まぁ知子地縛霊だからここ以外行けないしね。 真理 あの、幽霊って生きてる時の記憶は? 花子 私はあるよ。あの子はないみたい。 真理 それって、事故のショックとか? 花子 そうかも。でも交通事故で死んでも覚えてる人もいるし、私にもその辺はよくわかんないや。 真理 そうなんですか。 花子 とにかく、あの子は何も覚えてないから。だから、さっきのちょっと混乱しただけだと思うから。ごめんね。 真理 いえ。……あの、私が会うとよくないですか? 花子 うーん、どうかなー。 真理 私、知子に謝らなきゃいけないことがあって。まさか会えるなんて思ってなかったから幽霊でもあえるなら会って話したいんです。 花子 まぁ、気持ちはわかるけど…… 真理 えっと、 花子 あぁ、花子。 真理 花子さん、知子と友達なんですよね。話をさせてくれませんか? 花子 うーん、聞いてみるけど、話すことになってもあんまり刺激しないであげてくれる?思い出しそうになると頭痛かったりするみたいだから。 真理 はい、気を付けます。だから 花子 (遮って)とりあえず聞いてくるよ。あっちにでも座ってて。行ってくるね。 音楽入る。音楽にあわせて無声で花子、出ていく。出て行く花子を見つめ、腰かける真理。舞台奥暗くなる。 第4場 学校の前(舞台手前) 舞台手前明るくなる。下手から出てくる知子。具合悪そう。そこに田中が追ってくる。音楽小さくなる。 田中 大丈夫ですか?雨、結構強いですよ。 知子 あ、いえ、別に濡れても大丈夫なので。 田中 ……まぁ、でも気分的によくないでしょ。 知子 ありがとうございます。 田中 …… 知子 きっと、さっきの人知り合いなんですよね。 田中 そうみたいですね。 知子 なんか、申し訳ないことしちゃいました。 田中 それは仕方ないんじゃないですか? 知子 あーあ、私、何で思い出せないんですかね。 田中 別に無理して思い出さなくてもいいと思いますよ。 知子 でも、思い出せないのってなんか気持ち悪いんですよね。所在ないっていうか、何か不安で。だから、ちょっと花子さんがうらやましい。 田中 …… 知子 すみません。そんなこと言われても困りますよね。私、実は未練とかなくて記憶さえ戻れば成仏できる気もするんですよね。 田中 でも、成仏しちゃったら花子さんがさびしがりますよ。 知子 どうですかねー。あの人地縛霊じゃないですし、それならそれでどっか行っちゃいますよ、適当に誰かに取りついたりして(笑) 田中 確かに、自称悪霊だしね。 知子 あれ、自称じゃないですよ? 田中 え? 知子 知らなかったんですか?この前も花子さん、学校に入ってきた不法侵入者を不幸にしちゃったんですよ。 田中 え、不幸って…  花子、下手から出てくる。 花子 (遮って)あー、二人で楽しそうに。どうせ私の悪口言ってたんでしょ? 田中 (脅えて)花子さん。 知子 言ってませんよ。 田中 そうですよー。 花子 (田中に近づいて)どうかなー?ま、いいや。こんな日に外いたら風邪ひくよ知子。 知子 ひきませんよ。 田中 ってか僕の心配はしてくれないの? 花子 おじさんは風邪ひかないよ。 田中 僕、一応生きてるんだけど。 花子 うん、でも引かないから大丈夫。(知子に)それでさ、さっきの人だけど高校の同級生だって。待ってるけど話す? 知子 あ…… 花子 嫌ならかえってもらうけど。 知子 ……。 花子 別に無理する必要はないと思うよー。こっちは死んでるんだし。 知子 花子さんは、記憶あるんですよね? 花子 ……記憶なんてあったっていいことないよ? 知子 でも、私は思い出したいんです。だから、話してきますね。 花子 そう。じゃあ、さっきの部屋にいるから。 知子 ありがとうございます。   知子、下手へはける。田中も下手へはけようとする。霊媒師が上手から出てきて様子を窺う。 花子 何おじさんまで一緒に行こうとしてんの? 田中 え。 花子 明らかに邪魔でしょ。 田中 でも、外雨ですし。 花子 じゃあ、音楽室でも行ってなよ。 田中 えー、知らない部屋だとなんか変な物が出そうで怖いんですよね。 花子 今さら何言ってんの、さぁ、ほらさっさと行った行った。  コミカルな音楽入る。音楽にあわせて無声で田中、花子、下手へはける。霊媒師もそれを見届け後をつける。舞台手前暗くなる。 第5場 廃校の中  舞台奥明るくなる。一人で物思いにふけってる感じの真理。そこに知子がやってくる。音楽小さくなる。 真理 知子! 知子 あの、さっきは急に逃げちゃってすみません。 真理 ううん、こっちこそごめん。記憶ないんだよね? 知子 はい。 真理 花子さんから少し聞いた。だから改めまして、私、高校の時、文芸部で一緒だった坂井真理です。よろしく。 知子 坂井さん? 真理 うん。真理って呼んでくれるとうれしいけど。急には難しいか。 知子 あ、はい。じゃあ、とりあえず真理さんでもいいですか? 真理 もちろん。 知子 私は、島田知子です。知ってるんですよね? 真理 うん。 知子 ……私、どんな子でした? 真理 優しくていい子だった。いっつも私が愚痴とか話してもニコニコ聞いてくれてた。 知子 …… 真理 あ、何か過去形でごめん。 知子 いえ、だって過去ですから。 真理 でも。今、いるから。変な感じ。 知子 そうですね。 真理 また、こんな風に話せるなんて思わなかった。 知子 …… 真理 いつも部活の後にマック行って、次の小説のネタとかしゃべって。最近好きな小説の話したり。先生の悪口言ったり、今考えればベタだよねー。でも、すごく楽しかった。 知子 ……ごめんなさい。覚えてなくて。 真理 ううん。それは知子のせいじゃないし。(小声で)むしろ謝らなきゃいけないのは私の方だから。 知子 いえ。(話題を変えるように)ところで、真理さんは今、何してるんですか? 真理 つまんない事務職だよ。派遣だからいつ切られるかわかんないし。本当は小説で生活していきたいんだけどね。 知子 今も書いているんですか? 真理 うん。一応、たまーに雑誌に短編のっけてもらえたりするけど。 知子 すごいじゃないですか。 真理 (苦笑して)ダメだしされてばっかりだけどね。どうしても似たような話になっちゃうし。 知子 でも、やりたいことがあるのって素敵だと思います。 真理 ……でもちゃんと本になったのは1冊だけだから。 知子 1冊でもすごいですよ。 真理 ……ありがとう。  ベートーベンの「運命」がかかる。田中が駆け込んでくる。 田中 出たんですよ!! 真理 え!? 知子 何がですか? 田中 ベートーベン。ベートーベンの目が光ったんですよ。 真理 え!? 知子 あー、ベートーベンさんは動きますよ。知りませんでしたっけ? 田中 知りませんよ!だから知らない部屋は嫌なんですよ。  ベートーベンが入ってくる。ものすごい距離感でつかつか詰め寄ってくる。 ベートーベン (真理を指さし)われの眠りを妨げたのはお前か。 真理 え、私じゃないです。 知子 田中さんですよ。 田中 何で言っちゃうんですか。 ベートーベン お前か。 田中 すみません。眠ってらっしゃるとは知らなかったんです。 ベートーベン 許さん。さぁ選ぶのだ。赤いちゃんちゃんこと青いちゃんちゃんこどっちがいい? 田中 へ?  音楽止まる。 ベートーベン だから赤いちゃんちゃんこと青いちゃんちゃんこどっちがいい? 真理 (小声で)それ、トイレに出る幽霊がいうやつじゃないの? 知子 (小声で)ベートーベンさん、学校の七不思議マニアなんですよ。この前はアロンアルファで開かずの扉を作ってました。 田中 (小声で)あ、あの扉そうなの!? 知子 (小声で)そうなんですよ。 ベートーベン (怒って)こらっ!人の話を聞け!! 田中 (小声で)え、とこれって赤を選ぶと血まみれにされたりします? 知子 (小声で)さすがにそんなことしないと思いますけどどっちを選んでもペンキまみれにされるおそれはありますね。 ベートーベン 何をこそこそ話しているさっさと選べ! 田中 えー、とですね。  そこに背後からこっそり近づく霊媒師。コミカルな音楽入る。 霊媒師 (ベートーベンのすぐ後ろで九字を切る)臨兵闘者皆陣列在前。お逝きなさい。 ベートーベン (不意を突かれて)へ?あーれー。 ベートーベン、きりきりまいしながらはけていく。音楽小さくなる。 田中 へ? 知子 え?ベートーベンさん。 真理 え、あなたは 霊媒師 申し遅れました。私霊媒師の御堂嘉代子です。 真理 はぁ。 霊媒師 私にはわかります。(知子に)あなたも幽霊ですね。成仏していただきます。 真理 え、でも知子は悪霊じゃありませんよ。静かに暮らしているだけみたいですし。 田中 そうですよ。知子さんはいい幽霊ですよ。 霊媒師 幽霊は全て悪霊です。いい幽霊などありえません。臨(九字を切ろうとする) 真理 (無理やり止めて)ちょっと、ちょっとやめてくださいって。 霊媒師 ちっ。 真理 え? 知子 ……あの、成仏できるんですか? 田中 へ? 真理 え? 知子 私、記憶がなくて何が未練で成仏できないのかわからないんですけど、それでも成仏できますか? 霊媒師 もちろんです。あなたも、つらかったのですね。私の力にかかればすぐに楽になれますよ。 真理 知子、何考えてるの!? 霊媒師 自ら成仏を望むなどとなかなかいい心がけではないですか。何か最後に言い残すことはありますか? 知子 え、と(真理に)思い出さなくてごめんなさい。 真理 そんな。私まだ話してないこといっぱいある。それに、私ちゃんと謝ってない!だからちょっと待ってください。 霊媒師 騒がしい人ですね。本人がいいと言っているのだからいいではありませんか。 真理 そんな。だって成仏したら完全にいなくなっちゃうんでしょ?そんな簡単に決められませんよ! 霊媒師 人間なのに幽霊に肩入れするのですか?私は人間でも呪えますよ。  そこに花子がやってくる。 花子 (霊媒師の方に手を置き)人の学校でうるさい。お前が呪われろ。  霊媒師が急に倒れる。田中があわてて支える。 花子 あ、やりすぎちゃった。ちょっとした嫌がらせのつもりだったんだけど、気失っちゃった。 田中 ……花子さん 花子 何よー。何か文句ある?私悪霊だもん。(上に向かって)坂谷くーん。 坂谷 (声だけ)いえーい、呼んだかーい。 花子 あんた、ほんと能天気ね。まぁいいや。変な霊媒師いるからしばらく放送室で閉じ込めて。 坂谷 え、霊媒師?俺成仏しちゃったら困るじゃん。 花子 大丈夫。大した力はなさそうだから。 坂谷 しょーがないなぁ。じゃあ、起きたら俺コレクション2015、聞いてもらうかなぁ。 花子 俺コレクション?ま、なんでもいいや。(田中に)じゃあ、おじさん運ぶの手伝って。  花子と田中で意識のない霊媒師を外に出す。 第6場 廃校の中  残った真理と知子。 真理 大丈夫? 知子 はい。 真理 そんなに成仏したかったの? 知子 だってこのままじゃ辛いんです。自分のことがわからないってすごく不安なんです。 真理 今度さ、昔の写真とか持ってくるよ、そうしたら思い出すかもしれないじゃん。 知子 でも、やっぱり真理さんにはわからないですよ。ちゃんと大人になって、働いて、生活して、小説も書けて。私なんてその間ずーっとここで生きてる子たちを遠目に見ているだけ。 真理 ごめん。 知子 いえ、ただの八つ当たりです。それくらいわかってます。ただ、いつまでもこのままっていうのは違うと思うんです。やっぱり私は死んでるんですし。 真理 それは…… 知子 たまに人が来てもすぐ来なくなっちゃいますしね。仕方ないんですけど。 真理 あの、ホームレスの人は? 知子 田中さんはここ1年くらい来てくれてますけど……。 真理 これからはさ、私も来るよ。毎日ってわけにはいかないけどさ。家も近いんだし。 知子 ありがとうございます。でも、生きてる人間と死んでる人間は違いますから。 真理 でも……  そこに、田中が帰ってくる。 田中 いやー、疲れた疲れた。 知子 あれ、花子さんは? 田中 何か変な魔法陣書いてます。 真理 魔法陣!? 田中 はい、何かこんなの(魔法陣を書く動き)。 知子 あぁ、それですか。たぶん、御堂さん、今年一年は魚が食べられないですよ。 真理 え? 知子 もれなく小骨が引っかかります。 田中 それは……。 真理 地味に嫌な呪いね。 知子 そうなんです。 田中 でも、知子さん、本当に成仏したいんですか? 知子 はい。記憶も戻りませんし、もう終わりにしたいんです。 田中 でも知子さんいなくなったら花子さんさびしがると思いますよ。僕もさびしいですし。 知子 大丈夫ですよ。花子さんは私よりずっと長くいますし、どこにでも行けますから。それに田中さんは生きてるじゃないですか。 真理 でも、成仏するとしてもあんな胡散臭いのに頼らなくても 田中 そうとう胡散臭いですよね、あの人。 知子 でも御堂さん、ベートーベンさん追い払いましたし、一応力はあるみたいでしたよ。 真理 でも、何か見下してる感じがいや。 田中 同感です。 真理 ねぇ、知子、成仏したいのはわかった。でも、だったらせめて少しでも記憶を取り戻すためにもう少しがんばってみよう。せっかく久しぶりに会ったんだもん。これがきっかけで思い出すかもしれないじゃない。 田中 たしかに、同級生がいるっていうのは大きいですね。 真理 そうですよね。私、卒業アルバムとか色々持ってくるよ!でさ、できること全部やってそれでもだめだったらまた考えよう。 知子 でも御堂さんはどうするんですか? 田中 …それは確かに。 真理 じゃあ、今のうちにできることをやりましょう。(田中に)協力してくれますよね。 田中 はい。 坂谷 俺も、俺もやるー。 知子 坂谷君? 坂谷 おー、楽しそう!混ぜて混ぜてー。 田中 霊媒師は大丈夫ですか? 坂谷 大丈夫、大丈夫。今日はもう絶対目を覚まさない。 真理 じゃあ、よろしくお願いします。 坂谷 おう、任しといて。でも、俺、頭脳派だから肉体労働はよろしく! 知子 (真理に)坂谷君は、実体がないので、あまり期待しないでください。 坂谷 知子ー、余計なこというなよー。 知子 ごめんなさい。  そこに影から様子をうかがっていた山下が入ってくる。 山下 あのー。 田中 誰?幽霊!? 山下 いえ、隣に住んでいる山下といいます。 真理 あ、さっきの。 田中 お知り合いですか? 真理 いえ、外でちょっと。 山下 あの、すみませんでした!!!(急に潔く謝る) 知子 え? 山下 幽霊さんにもそんな悩みがあるとは知らず、つい怖くて、霊媒師呼んじゃいました。 田中 霊媒師ってつい呼んじゃいます? 真理 タウンページに載ってましたっけ? 山下 私、幽霊恐怖症でして。どうしても怖かったんです。(知子に)だから、すみません。許してください。 知子 いえ、そんな。別に。 山下 お詫びにといっては何ですが、幽霊さんの記憶を取り戻すお手伝いをさせていただきます。 知子 え? 山下 ここで御堂さんが出てきてからの一部始終を聞いていたのですが 真理 そんな前から!? 山下 これから幽霊さんの記憶を取り戻すんですよね。何をするにしても人手はあった方がよいかと。 真理 それはそうかもしれないけど、あなたが霊媒師呼んだなら自分で依頼を撤回してくれればいいじゃないですか。 田中 たしかに。 山下 すみません、それは無理なんです。 真理 何でですか!? 山下 御堂さん、見ての通り除霊が趣味なんですよ。だから一度受けた依頼はいくらキャンセル料を積んでも勝手にやっちゃうんです。 田中 それはまたはた迷惑な。 真理 本当に。 田中 なら、やっぱり知子さんの記憶を取り戻すしかないですね。 山下 そうなんです。 田中 そういうことなら、一緒にやりましょうか。 真理 大丈夫かなぁ。まぁこの際いいか。よろしくお願いします。 知子 じゃあお願いします。 田中 何からやればいいですかね。あ、花子さんも探してきますか。  そこに花子が戻ってくる。 花子 私は手伝わないからね。 真理 あ、花子さん。 花子 絶対に手伝わないよ。 田中 花子さん、そんなこと言わずに友達なんだから。 花子 友達だからでしょ?やるなら勝手にどうぞ。 知子 花子さん。 真理 (気を利かせて部屋を出ようとしながら)じゃあとりあえず、お二人手伝ってもらっていいですか?私卒アル取ってくるのでその間にお願いしたいことがあるんですけど。 山下 (空気を読まずわかってない感じで)はぁ。 田中 (空気を読んで)あ、はいわかりました。 真理 (山下を押して)じゃあ、あっちでお願いします。 第7場 校舎の中(舞台奥) 舞台に残る知子と花子。 知子 花子さん。 花子 何? 知子 その、ごめんなさい。 花子 謝られたってうれしくないよ。ねぇ、何で? 知子 だって、ずーと変わらないままもう10年ですよ。歳はとらないし、記憶はないし、何がしたいのかもわからないし。 花子 双六とか人生ゲームとかトランプとかやること色々あるじゃん。 知子 そういうことじゃないんですよ、わかってるんでしょう? 花子 わかってるよ。でも、そうしたら私はどうしたらいいの? 知子 花子さんはどこにでもいけるじゃないですか。田中さんもいますし。 花子 おじさんはいつか死んじゃうよ。あの人、何も未練残らなそうだし。そしたらまた一人? 知子 花子さん。 花子 私だって寂しいんだよ。ねぇ、何で?このままじゃダメ?私がいて坂谷君がいてゲームとかしておじさん待って。それじゃダメなの!? 知子 …… 花子 ねぇ? 知子 私は、やっぱり違うと思うんです。 花子 ……そう。仕方ないね。……バイバイ。  部屋から出ていく花子。切ない音楽入る。一人取り残される知子。 真理 (声のみ)持ってきましたー。 田中 こっちも順調だよー。 山下 これ、本当に大丈夫ですか? 坂谷 大丈夫、大丈夫。幽霊だから死なないってー。 知子 私だってどうしたらいいかわからないんですよ。  音楽盛り上がる。照明で時間経過を表す。音楽小さくなる。 第8場 廃校の中  知子が座っているところに、真理、田中、山下が戻ってくる。 真理 お待たせしました! 知子 いえ、何かみなさんにご迷惑おかけしてすみません。 山下 いえ、もとはといえば私が悪いんですし。 真理 それはそうですね。とりあえず、準備はばっちりよ。懐かしのアイテムからショック療法まで色々取り揃えております。 知子 え?ショック療法? 真理 坂谷くーん、ミュージックスタート。  ポップな感じの音楽に合わせて音合わせで無声で動く。まずは、大きなハンマーを持ってくる田中。知子が逃げるが追いつかれる。結局殴られるが、効果なさそう。次に、山下が催眠療法的なことを始める。効果なさそう。真理が卒アル的なものを持ってくるが、勝手にしゃべり続けて全然ダメ。さらに3人で学校エチュード的なことを始めるが、やっぱりダメ。みんなで顔を見合わせてダメだねっていう感じになる。音楽小さくなる。 田中 やっぱりだめですかぁ。 知子 なんか、すみません。 真理 ううん、こっちの力不足。 田中 やっぱりわれわれじゃもう高校生にはみえないですよね。 真理 そういう問題じゃないと思います。 山下 あ、これ片付けてきちゃいますね。 田中 じゃあ、僕お手伝いします。 真理 あ、すみません。ありがとうございます。 知子 よろしくお願いします。    田中、山下小道具類をはける。 知子 なんか、いろいろやっていただいてありがとうございます。ここまでやってダメならダメなんだと思います。 真理 知子…… 知子 思い出せなくてごめんなさい。 真理 ううん、最初にも言ったけど謝るのは私の方だから。 知子 え? 真理 私ね、小説書けないの。 知子 でも短編とか載ったりするって。 真理 書いてるけど私じゃダメなの。知子の方が絶対才能あったの。 知子 いいですよ、そんな慰めてくれなくても。 真理 そうじゃないの。ごめん。本当にごめん。私の単行本になった小説、半分は知子が書いたものなの。 知子 え? 真理 あの頃、私たちよくリレー小説してた。お題決めて1章ずつ交互に書いたりして。あれもその一つだったの。それを手直しして応募しちゃって。まさか、受賞すると思ってなくて。 知子 …… 真理 だから本当にごめんなさい。 知子 そうだったんですか。 真理 うん。……本当は新人賞は知子が獲るべきだった。私には最初から才能がないの。だからいつまで経ってもダメなの。 知子 ……私、覚えてないので正直、悔しいとかないですし、よくわからないんですけど。でも、小説書いてたんだとしたらどんなかたちであれ本になったのはうれしかったと思います。 真理 でも 知子 それに、元々一緒に書いてて最後に手直ししたのは真理さんなんですよね。なら、それでいいんじゃないですか。 真理 知子……  SE警報。 坂谷 あ、霊媒師、脱獄しました! 知子 え? 真理 ちょっと、坂谷君!?大丈夫? 坂谷 大丈夫だけど、山下さんと田中さんが  SEぶつっと、回線の切れる音。そこにバタバタと田中が戻ってくる。 田中 まずい、山下さんが霊媒師にやられちゃった。 知子 え!? 真理 そんな! 田中 もうすぐこっちにやってきますよ。 真理 知子、本当に成仏しちゃうの? 知子 …… 真理 ここにいてもいいじゃない。花子さんも田中さんもいるんだし。私だって来るよ。 知子 でも 真理 そりゃ、私は生きてるし記憶もある。だからわかるなんていえない。でもさ、今少しでも楽しいなら今成仏しなくてもいいじゃん。 知子 ……  そこに霊媒師が入ってきて、知子の方につかつか寄ってくる。 霊媒師 さっきは不意をつかれました。が、今度はそうは行きません。すぐにあの世行きです。 真理 ちょっと、私が話してるんだから邪魔しないでよ。 霊媒師 さっきからうるさい人ですね。だまりなさい。(真理に手を向け呪文っぽく)チンゲンサイ。 真理 え?(固まって口をぱくぱくさせている)。 田中 え、真理さん?真理さん? 霊媒師 (田中に)邪魔立てするとあなたもこうなりますよ。 田中 大変申し訳ございませんでした。 真理 (はぁ?みたいな顔で田中を見る) 霊媒師 これでようやくあなたを成仏させてあげることができます。 知子 やっぱり、ちょっと待っていただけませんか? 霊媒師 今さら何を言ってるんですか? 知子 まだ真理さんと話している途中でしたし、私、花子さんとも話さないといけない。 霊媒師 往生際が悪いですよ。臨兵闘…… 知子 (適当なところで遮って)やめてください! 霊媒師 え? 知子 私、まだわからないですけど。でも、今あなたに除霊されるのはやっぱり違う気がするんです。さっきの依頼、取り消してください。ごめんなさい。 霊媒師 あなた、そんなことで済むと思っているの?大体幽霊なんですべからく除霊されるべきなのよ。 知子 でも 霊媒師 どいつもこいつもうるさいのよ。 花子 (背後から近づいて)うるさいのはお前だよ、軽く呪われろ。 霊媒師 え?(そのままフリーズする) 花子 あー、今度はうまくいった。さっきは効きすぎちゃったからね。ねぇ、黙ってよーく聞いてね。出てけ。二度と来るな。 霊媒師 (フリーズが解ける)えーと、 花子 わかるよね? 霊媒師 (無言で出て行き、出口で)覚えていてくださいね。絶対あきらめませんから。霊媒師の御堂嘉代子でした。 田中 見事な負け惜しみだなぁ。 真理 知子。よかった。でも、どうして? 知子 何か、本当に消えちゃうって思ったらまだやり残したことあるような気がして。おかしいですよね。死んでるのに。 真理 ううん、全然おかしくないよ、幽霊でもいてくれてうれしい。 知子 ありがとうございます。皆さんも色々ご迷惑おかけしてすみません。 田中 いやいや、知子さんがいかないでくれてよかったですよ。あ、じゃあ僕山下さんの様子見てきますね。 真理 あ、すみません。 花子 私も一緒に行く―。あんな霊媒師呼んだ文句も言ってやらなきゃ。 田中 呪っちゃだめですよ。 花子 えー、ちょっとならいいじゃん。靴下がびしょびしょになるだけだよ。 田中 けっこう辛いなぁ。  田中、花子はける。 真理 山下さん、大丈夫かな。 知子 多分、靴下だけですし。 真理 そうだね。(しみじみと)でも、本当に良かった。 知子 すみません。 真理 もう、知子謝ってばっかりだよ。 知子 そういえばそうですね(笑)。 真理 あー、そういや、ホラーも書かなきゃいけないんだった。 知子 ホラーですか? 真理 うん、あんまり得意じゃないんだけど。頼まれてて。今日の話でも書こうかな。 知子 それ、ホラーですかね? 真理 うーん、微妙か。廃校に幽霊なんだけどなぁ。 知子 ホラーではない気がします。 真理 そっかぁ。じゃあ花子さんに取材してみようかな。悪霊なんだよね。 知子 はい、たしかにその方がホラーな話が聞けるかもしれませんね。怖すぎて使えないかもしれませんが……。 真理 それは困るなぁ。そうだ。地味に気になってるんだけど、花子さんの死因と享年ってそんなにやばいの? 知子 世の中には聞かない方がいいこともありますよ。 真理 そっか。じゃあ、聞かない。 知子 それがいいと思います。あ、雨、小降りになったみたいですよ。 真理 ほんとだ。今度さ、一緒に小説書かない? 知子 え? 真理 でさ、新しいペンネームつけて応募ししようよ。 知子 ……いいですね。考えておきます。 真理 ありがとう。 そこに、山下、田中、花子戻ってくる。 田中 山下さん、無事でしたよ。靴下以外は。 真理 あ、なら、まぁよかったです。 知子 すみません。私、結局もう少しこのままここにいることにしました。 山下 田中さんからお聞きしました。私のせいで色々とご迷惑おかけしてすみませんでした。 花子 ホントだよ。 山下 すみません。あの、今日は遅いですし、今度改めてごあいさつに伺いますね。 花子 私、福砂屋のカステラが食べたい。 知子 花子さん。 山下 すみません。ぜひ、お持ちします。 田中 私もご相伴に 花子 おじさんの分はないよ。 田中 花子さん。あ、ちなみにここ当然不法侵入なので来るなら夜ばれないように来た方がいいですよ。 山下 そうですよね。田中さん、いつもどこから出入りされているんですか。 田中 じゃあ、ちょっとご案内しますよ。真理さんも一緒に行きます? 真理 あ、じゃあよろしくお願いします。 山下 では、失礼しますね。また。 田中 山下さん、そっちは開かずの扉ですよー。山下さーん。 山下 あぁ、あかない。  山下、田中出ていく。 知子 山下さん、さんざんですね。 真理 幽霊恐怖症が悪化しないといいけどね。 知子 たしかに。 真理 じゃあ、またね知子 知子 お気をつけて。 花子 ばいばーい。   真理出て行く。 知子 急に静かになっちゃいましたね。 花子 そうだねー。 知子 花子さん、ごめんなさい。 花子 何が? 知子 いえ、何でもないです。人生ゲームしますか? 花子 するするー。どこにしまったっけー? 坂谷 人生ゲームは放送室に隠された。やりたければ俺も混ぜろー。 知子 げっ、またですか。 花子 もう、だからあんたルーレット回せないじゃん! 楽しげな音楽入る。無声で演技。坂谷君に文句を言いつつ人生ゲームを探しに行く知子と花子。時間経過照明であらわせれば。 後日な感じで知子と真理が入ってくる。二人で小説の話をする。お土産を持って山下が入ってくる。花子が入ってきて前の通路を指さす。田中がベートーベンに追いかけられて出てくる。田中が火をつけようとしてベートーベンを追いかけていく。 みんなで笑顔になっている絵で終わり。  ---------------------------------------------   以上、いかがでしたでしょうか? 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