題名:ある劇部の練習風景    劇団:東京都立大学附属高校演劇部    作者:上野 小夜  ---------------------------------------------  著作権について  ・本ページで公開されている作品の著作権をはじめとするすべての権利は   全て作者が保有いたします。  ・このページからダウンロードできる脚本は全て無料で読んでいただいて   結構です。ただし、舞台等で御利用の際は、作者からの上演許可を取っ   ていただくようお願いいたします。  ・必要に応じての改編等も、作者への許可の上行って下さい。  ・著作権料が発生する場合、指定された額を作者へ送金を忘ないように   お願いいたします。本作品おける著作権料は、下記に示す通りです。  ---------------------------------------------   小学校、中学校、高校、その他学生の無料公演・・無料   アマチュア劇団の公演、学生の有料公演・・・・・5000円   プロの劇団の公演・・・・・・・・・・・・・・・全チケット収入の1割     (全チケット収入の一割が5000円に満たない場合は5000円)     [2]の場合、公演の2週間前までに、     [3]の場合、公演後2週間以内にお支払いください。  --------------------------------------------- ある劇部の練習風景 市野 梓(気弱な部長)   桐生 華恋(男らしい。最近何故か黒魔術にはまる部員)     城崎 紗夜(しっかり者だがもっともきつい演劇部マネージャー)  佐藤 朋美(ほわわんとしたかわいこぶりっこの後輩) バカップル男(佐藤) バカップル女(城崎) 店員(城崎) 客(桐生)   第一場 教室 佐藤 はぁ、寒いです。毎日、毎日こんなんじゃ凍っちゃいますよ〜。 城崎 そお?これ位たいしたことないわよ。 桐生 そりゃ、おまえはな。だいたいこの時期にセーターもなく過ごしていられる辺りで常人とは違うだろ。 城崎 何それ?しっつれいねぇ。あたしは普通ですー。 佐藤 でもお言葉ですが、城崎先輩今日は一般的に寒い日であって決してそんな薄着で過ごせる日ではないと思います。 城崎 うるっさいわねぇ。そんなに寒い、寒い言ってるとあんなになっちゃうわよ(市野を指差す)   市野は、ずっとコートに丸まって「寒い、寒い」と呟きながら教室の隅のほうにいる。 市野 寒い、寒い。凍えるー凍死する。 佐藤 うわぁーたとえ凍死したってああはなりたくないです。 桐生 人間の成れの果てやね。 城崎 あれ、あいつ霊長類ヒト科だっけ? 市野 あ?なんか私呼んだ? 三人 全然(ですぅ) 城崎 あれと目合わせちゃだめよ。 桐生 餌ねだられるぞ。 佐藤 気をつけます〜。 市野 やっぱり何かいってんじゃないかよ。むしろめちゃくちゃ私の悪口じゃん。 桐生 (笑顔で)気にすんな。 市野 するわっ。 城崎 でもねぇ、あんたは言われても仕方ないわよ。だって、毎日暖房がつかないのはあんたのせいなんだもん。 市野 ちょっと待て。そんなことはないだろ。 城崎 それがあるんだなぁ。じゃーん、これなーんだ。(手には1枚の書類) 桐生 なんだそれ?冷暖房使用届出書? 城崎 そっ。これを市野がきちんと提出してればこの部屋にも暖房が入るようになるはずなのよ。 桐生 てめぇ。 佐藤 えぇ、今までずぅぅっと寒い中部活をやらなくちゃいけなかったのは梓先輩のせいだったんですか。やっぱり最低ですぅ。前からそうは思ってましたけど。 市野 まぁ待て、まぁ待て。皆落ち着こうじゃないか。 城崎 あんた以外十分知落ち着いてるけどね。 市野 私は悪くない。そんな書類があることを知らなかったんだ。 桐生 おまえが馬鹿なのが悪い。 城崎 無知は罪よ。 市野 だいたい知ってるんならお前が書きゃよかったじゃねーかっ。 城崎 最初からあたしは言ってるじゃない。あたし、別に寒くないって。 佐藤 先輩…。 桐生 もういいよ、おまえ。北海道でも行っちまえ。 市野 ほぉら、やっぱり悪いのはあいつじゃないか。っていうかおまえは寒くないなら、文句言うなよ。私の方がよっぽど寒いんだぞ。 城崎 あたしだって一応寒いと感じる感覚は持ち合わせてんのよ。だいたいねぇ、あんた部長としての仕事ほとんどしてないんだからこれ位やったっていいでしょ。 市野 すいません。えっと、でもこれからはですねぇ、せめてそういう場合は書類の存在ぐらい教えて頂けるとですねぇ、あの誠にありがたいんでございますが…。 城崎 めんどくさい。 市野 あっ、そうですよね。失礼しました。 桐生 腰ひっくー。 佐藤 でも、謝ってるってことはぁ結局のところ梓先輩が悪いって事ですよねぇ? 桐生 だな。 佐藤 せんぱーい。私ぃ、あったかいあんまんが食べたいんですけど。 桐生 じゃあ、俺はあったかいお茶でも。 城崎 いいね。それじゃあ、あたしはアイスクリームでいいや。 三人 寒っ。 市野 っていうかちょっと待てよ。もしかしなくてもそれは私が奢るってことなのか? 佐藤 貧乏な先輩にそこまでは望みません。ただ、買って来て欲しいだけです。 市野 この寒い中を? 佐藤 (笑顔で)はいっ。 市野 どうしてそうなるんだよ。 桐生 俺は現金でもいいけど(市野の財布にてをかける) 市野 いや、そういう問題じゃねーよ。そうじゃなくてどこをどう考えたって悪いのは100%城崎だろ? 城崎 でもさっきあたしに謝ったじゃん。 市野 ノリだよっ。 佐藤 まぁまぁとりあえず悪いのはすべて梓先輩ということで… 城崎 そうそう電信柱が高いのも…。 桐生 郵便ポストが赤いのも… 市野 すべて私が悪いんですってなわけあるかーーーー。 桐生 五月蝿いよ。おまえ、素直にいけよ。 城崎 まぁただ買ってくるだけじゃねぇ…じゃあ、そこのセブンまで5分で買ってこれたら市野の分もあたしが払ってあげる。 佐藤 先輩太っ腹〜。 市野 はっ?どう考えてもあそこまで片道5分はかかるよ。わかってる、城崎さん? 城崎 ちなみに帰ってこれなかったら全員分自腹ね。 市野 (絶句) 桐生 鬼だな。 城崎 (にっこり笑って)誰が? 佐藤 じゃあ、そういうことであんまんよろしくおねがいします〜。 市野 あきらかに私に不利だろ、これは。 城崎 ごたごた言ってるとはじめるわよ。はい、5、4、3、2 三人 1! 城崎 いってらっしゃーい。 佐藤 がんばってくださーい。 桐生 まっ、頑張れ。 市野 おまえらなんて最低だぁーーー。   言いながら、市野走り出す。暗転。   第二場 on hers way to コンビニ   走っている市野 市野 なんなんだよ、あいつらは。ぜったい私が部長だってこと忘れてるよな?うん、そうだとしか思えない。なんで私がパシられなくちゃいけないんだよ。こうなったら、絶対払わないからな。マラソン大会215人中208位をなめんなよ。   馬鹿ップル登場。ゆっくりと市野の前を歩く。 女  ねぇねぇ、今日の夜ご飯は何がいい? 男  なんでもいいよ。お前が決めたものなら。      市野、横を通ろうとするがそのつどカップルが邪魔をする。 男  それよりお前疲れてないか? 市野 あのー、…。 女  やだぁ、まだ家出てから5分しか経ってないわよ。 男  でも、今日は寒いしな。おまえが凍えちゃうんじゃないかと心配なんだよ。 女  あなたと一緒にいればどんな寒さも耐えられる。 男  愛のパワーだな。 市野 すいませーん。 女  もう、照れるじゃない。えっと、それで夜ご飯よね。何がいいかなぁ?そうだ、こんなに寒いんだもん。鍋焼きうどんとかどう? 男  いいな。鍋焼きうどんなら、あっためるだけだしな。 市野 (カップルと反対を向き)思いっきりレトルトかよっ! 女  おでんもいいよね。 男  おまえ好きだもんな。 女  あはっ。覚えててくれたんだ。嬉しい。 男  当たり前だろ。 女  じゃあ、おでんの中であたしが一番好きなものはなーんだ? 男  餅巾着。 市野 はい、はい、私も。  馬鹿ップル、ここにきて初めて振り返る。 二人 何あんた? 市野 えっと、いやあの。 男  ほっとけよ。ちょっと、頭のねじが弱いんだろ。 女  やだ、こわーい。世の中には変な人がいっぱいいるのね。 市野 (小声で)うぜぇ、銃があったら撃ち殺す。 男  気をつけろよ。お前みたいなかわいい子は危ないからな。 女  いっつもあなたと一緒にいるから平気よ。 市野 おまえらのがよっぽど変だろ!なんなんだよ、ここだけめちゃくちゃ暑い世界つくりやがって。此処は熱帯か!アマゾンか!! 二人 あぁ!何か文句あるわけ!! 市野 すいません私が悪かったです。 女  まったく、さいてーい。いったいあたしたちの何の恨みがあるわけー? 男  だから、相手にすんなよ。 市野 私はただこの道を通りたいだけだー!!(間)お願いします。通してください。急いでるんです。 男  なんだ、そんな簡単なことか。そうならそうと早く言えよ。 女  そうよ、はい。   馬鹿ップル離れる。 市野 あっどうも。ありがとうございます。それでは、失礼して通させて頂きます。 男  いいからさっさと行けよ。   市野通り過ぎる 女  邪魔者もいなくなったしようやく心置きなく手つなげるね。 市野 (小声で)最初から手つないでたじゃねーかよ。 男  あぁ、こんなに寒いんだもんな。おまえの近くにいなかったら凍えちゃうよ。   カップル退場。市野、走りながらキレる。 市野 ったくなんなんだよ。あいつら。まじうぜー。なんか私に恨みでもあんのかよ。これで城崎に奢らせられたらあいつらの所為だ。ってか、何?あの暑苦しさは?あんなのどうせ、1週間位で別れるんだよ。そうじゃなきゃ理不尽だ!! 第三場 コンビニ   レジのところでもめてる客と店員。市野はそれに気づかず店内を見る。 市野 何買うんだっけ?佐藤があんまん、桐生がお茶、城崎がアイスクリーム?ったくこの時期にアイスクリームなんて頼むなよ。買う方が寒いっつうの。ど、れ、に、し、よ、う、か、な、と。やっぱこれか?インドの不思議カレーアイス。どこら辺が不思議かわかんねーけどな。ってか日本製だし。250円か高いな。よし、60円のバニラアイス決定。 客  ちょっと、これ宅配便お願いね。 店員 はぁい、こちらですね。少々お待ち下さい。   店員何か、紙を出す。 店員 えっと、中身の方は? 客  何で、そんなこといちいち答えなくちゃいけないの? 店員 へっ? 客  だから、そんなことあなたに答える義務はないって言ってんの。あんたはこれを送ればいいのよ。 市野 あんまんはレジのとこだよな。ってか、どうせ佐藤だしあんまんより何か変なの買ってってやろうかな。うーん、いちごみるくまんか?ほどよく不味そうだ。 店員 一応規則ですので…。 客  その規則は何のためにあるのって聞いてるの! 店員 それは、その…店長〜。   店員、一回退場 市野 でも、結局私が食べる羽目になりそうな気もするよな。いや、それはそれでおいしいか? 店員 危険物の輸送を避ける為だそうです〜。 客  ふーん、つまりあなたはこれが危険物だと言いたい訳ね。 店員 いえ、決してそういうつもりでは〜。 客  じゃあ、必要ないじゃない。 市野 (ちょっと嬉しそうに)えっ!トラブル?トラブル!? 店員 それはそうなんですがやはり一応…。 客  しつこいわねぇ。じゃあ、勝手に見れば! 店員 それでは失礼して…。   店員、ダンボールを開ける。中にはぬいぐるみ(カーミット君?) 客  何の問題もないでしょ。 市野 (小声で)あれ、あの人が買ったの!? 店員 はいー、すみません。では、送り先の住所の方をお願いします。 客  グレートブリテン王国首都ウィーンマンハッタン市5番街フーリッシュビル404。 市野 それは、どこの星の地名だよ!! 店員 えーと、グレートブリテン王国首都ウィーン…。 市野 真面目に書いてるしっ!! 店員 すいませーん、後半もう一度お願いします。 客  ロスアンゼルス市セルフィッシュビル909よ。 市野 さっきと変わってるし! 店員 えっと、あれ?国内じゃないんですね〜。 市野 今更!? 客  もういいわよ、貸して。自分で書くわ。   客、紙を取りさっさと書いて、店員に渡す。 店員 すみませーん。有難うございます〜。(紙を見て)あれ、目黒区八雲1−1−2? 客  何か文句ある? 店員 えっいえ〜。えっと、2週間位あれば平気です〜。 客  当然でしょ。だいたいあんたが届けるわけじゃないじゃない。 店員 それはそうなんですが〜。 市野 もう何でもいいから速くしてくれよ。 客  そちらも何か文句でも? 市野 いえ、滅相もございません。 客  ふん、まぁいいわ。もう飽きたし。いい暇つぶしにはなったわよ。 店員 はへっ? 市野 今の全部暇つぶしかよ!!私の時間を返せ!!   客、市野を思いっきり睨む。 市野 有意義な時間を過ごさせて頂き誠に有難うございます。 客  安心しなさい。もう二度と来ないから、こんな店。 店員 (力なく)有難うございました〜。   市野、商品をレジに置く。 市野 あと、あんまんもらえますか。それにしても…。なんなんでしょうかね。あのばばぁは。 店員 すみませーん。長い事お待たせしてしまって…。 市野 いえ、いえ、滅相もない。すべてあのばばぁの所為ですよ。 店員 そう言って頂けると、ありがたいです〜。   言いながら店員レジを打つがものすごくとろい。 店員 でもご迷惑をかけたので〜。あっ、飴でもいりますか?   店員、ポケットから飴を出す。 市野 あっ、いや飴はいらないんで出来れば、あのもう少し急いで下さい。 店員 すみません。いっつも私何してもとろいって言われるんですよね〜。   店員、喋ってる間は手を止める。 市野 あの、だから他の事考えなくていいんでなるべく速くお願いします。 店員 はい〜。……………。   店員、無言で作業を終える。 店員 以上で378円になります〜。 市野 おつりいらないんで。   市野、レジに400円置く。 店員 あっ、おつりの寄付ですね。有難うございます〜。こちらはアフリカの恵まれない子供たちに送られます。お客様のお入れになった22円で11人の子供たちにノートを送りことが出来ますし、井戸を作るための費用にも…。 市野 (早めに遮って)何でもいいんで、じゃ。   市野、走り去る。 市野 まったくなんで今日に限ってこんなについてないんだよ。今日は何だ?仏滅か!三隣亡か!?おうし座は12位ってか??あぁ〜、絶対間に合わねー。だいたい今何分だよ。時計持ってねーからわかんないんだよ。 第四場 教室   市野、教室に走りこんでくる。他の人は前の衣装のまま。 市野 はぁ、はぁ、間に合った? 城崎 あたししらなーい。誰か時間計ってた? 桐生 俺だってしらんよ。 佐藤 え〜てっきり城崎先輩が計ってるものかと。 城崎 だって、それどころじゃなかったし。 市野 ちょっと、あなた方ね。なんなの。私は死ぬほど苦労したんだぞ。変なバカップルはいるしさ。嫌味な客にとろい店員いろんな奴とバトルを繰り広げてきたんだぞ。 佐藤 そんなこと知ってます。 市野 知ってるわけな……!!おまえらその格好…。 城崎 やっと気づいたの? 桐生 部長の癖に部員の演技に気づかないなんて最低やね。 佐藤 ちっとも梓先輩が気づいてくれないんでちょっとショックでした〜。 市野 ふ・ざ・け・る・なぁぁ〜!! 桐生 いい演技の練習になったよなー。 佐藤 梓せんぱーい。私の男役いかがでした? 市野 私の苦労はなんだったんだぁ〜。 城崎 えっ?無駄骨。 桐生 いや、見世物としてはなかなかよかったんじゃないか? 城崎 ま、ね。じゃそろそろ5時だしアイスでも食べながら帰ろっか。 桐生 俺の横で食うな。見てる方が寒い。 城崎 駅まで方向一緒なのにどこで食べろっていうのよ。 桐生 家帰って食え。 城崎 溶けちゃうよ。 佐藤 何でもいいからさっさと部活終わらせて帰りましょうよ。せっかくのあんまんが冷めちゃいます。 桐生 そやな。じゃ、帰るか。 佐藤 わーい、お疲れ様です〜。 市野 ちょっと待てよ。何か忘れてるだろ。おい。そこの三人。 桐生 何か言ってるぞ。 城崎 えぇ〜あたしには何もきこえないなぁ。 市野 おい、城崎おまえふざけんな。そこの黒、絡み女、部長を置いて帰る気か。 桐生 いいんか、ほっといて。 城崎 桐生、目合わせると取り付かれるわよ。 市野 この極悪女。鬼、悪魔。   三人すたすたと歩いてく。 市野 ちょっと待ってホントにおいてくの?ねぇ、ちょっと待とうよ。ねぇ、ってば。待ってください。すいません、城崎さん、ちょっと桐生さん、佐藤〜。   市野、後を追っかけて幕  ---------------------------------------------   以上、いかがでしたでしょうか?   よろしければ下記のページより、感想を御記入下さい。   もちろん、叱咤激励なんでもかまいません。   作者の方の励みにもなりますので・・・    http://haritora.net/bbs/?type=4280   また、下記ページから作品の評価登録も可能です。(要登録)    http://haritora.net/critic/member/look.cgi?script=4280  それでは、今後とも『はりこのトラの穴』をよろしくお願いいたします。